新米アンナの神獣診察日誌

えーと、自己紹介は、私からね。
私の名前はアンナ・ハウスフィールド。
２１歳で、アカデミー卒業ほやほや一年目の新米獣医よ。
腕はまだまだ未熟だけど、やる気だけは誰にも負けないつもり。
まあ、時々、やる気が空回りしてクリストに怒られることもあるけどね。
……あー、思い出しただけでムカつく！　なんなのよ、あの陰険メガネ！
って、話がそれちゃったね。
自己紹介で、あと言うことと言ったら……。
そうそう、私、神獣の言ってることが分かるんだよね。
昔はそれが原因でいじめられたりしたから、みんなには内緒なんだ。
誰にも言わないでね。

クリスト・カートライトだ。
３１歳。
獣医としては１０年目だが、医院長の腕には程遠いな。
いつかは、医院長を超える獣医になりたいものだ。
あと、最近の悩みと言えば、あの新米に毎日手を焼いていることだな。
あいつは俺を怨んでいるようだが、怒られるだけのことはしている。
当然の結果だ。
あいつが起こした事件の始末書を、何枚書いたことか……。
少しは同期のエリーを見習って欲しいものだな。
医院長が、あいつをクビにしないのが不思議なくらいだ。
まあ……やる気だけは、あるみたいだからな。
そこだけは評価してやるか。

エリー・コーニッシュよ。
アンナとは同期で、同僚。アカデミー以来の付き合いよ。
あの子、なんか抜けてて放っておけないのよね。
アンナとは同じ歳なんだけど、なんか、手のかかる妹って感じかな。
アンナは、クリスト先生に目の敵にされてるって言ってるけど、
私から見れば、可愛がられてるなぁって思うんだけど。
最近の悩みと言えば……ディルク医院長のセクハラかな。
ホント、早く死ねばいいのに。あのジジイ。

ディルク・クライトンだ。４８歳。まだまだ若いだろ？
『ホーリー・ジェネラル・ホスピタル』の医院長をやっている。とても偉くて、凄い人間なんだぞ。
私と「愛人になりたい」という美女がいれば、気軽に言ってくれ。
えーと、最近の悩みと言えば、あれだ。エリー君の暴力だな。
お尻を触ったくらいで、注射器で目を刺そうとするなんて、まったくけしからん。
あとは、あれだな。神獣の権威とか言われて、学会に呼ばれるのが面倒くさい。
学会に行ってる間、エリー君やアンナ君とスキンシップできんだろうが！
あー、早く、クリストに医院長の座を渡して、エリー君やアンナ君を愛人に囲いたいもんだ。

フェンリルだ！
神獣に自己紹介しろって、変わってんな。
大体、アンナの姉ちゃん以外に、俺の言ってることわかるのかよ？
……まあ、いいか。
最近の悩みは、自由がないってことだな。
四六時中、檻の中って誰だって気が滅入るだろ。
あーあ、あっちの世界に帰りてえなぁ。

バロンって言います。
私たちは、ただ静かに暮らしたいだけなんです。
そっとしておいて欲しいです。
こちらの世界には、迷い込んできたのですけど過ごしやすくていいですね。
あの子は、あっちの世界に帰りたいみたいですけど……
あっ！　もう、こんな時間。
そろそろ帰らないと、あの子が心配するわね。

バロンだよ……
え？　なに？　何か言えって言われても……。
こっちの世界は怖い動物とかいっぱいいるから嫌だなぁ。
早く、あっちの世界に帰りたいよぉ。
あれ？　お母さん、まだ帰ってこない
どうしたんだろう……

ユニコーンだよ。
僕たちって、珍しい種族らしいんだ。
だから、よくこっちの世界に呼ばれることが多いみたい。
僕とお母さんも、無理やりこっちの世界に呼ばれたんだ……
どうして、人間ってこんなことするんだろう？

はじめまして、アンナの母親です。
熱意に負けて、神獣の獣医になることを許したけど心配だわ。
あの子、昔っから抜けてるところがあるし、いつ大怪我したっていう電話が来るかドキドキものよ。
でも、エリーっていう良い友達もいるみたいだし、大丈夫かしらね。
早く結婚でもして、獣医を辞めてくれないかしら。